2013年5月27日月曜日

体験作文を書こう ー 体験作文の書き方 中級編 ー


体験作文の書き方中級編
一年生の時に、作文と料理づくりは似ているという『志学』を書いたのを覚えているだろうか? 
引用開始ーーーー
引用終了ーーーー
作文を書く流れを示したものだ。
二年間の修行を経て、諸君はこの流れを身につけることは、ほぼできたのではないだろうか。
 
ここでもう一つ上のランクの作文の技術を指導したい。
それは、作文に描くテーマのことである。
 
【ありきたりではだめ】
 
毎日新聞の論説委員や「サンデー毎日」の編集長をしていた近藤勝重さんは、就職試験で書く作文のコツとして、
 
「誰にもかけないことを、誰にも分かるように書く」
 
ということを示している。(『人のこころを虜にする”つかみ”の大研究』新潮社OH!文庫)
これはどういうことなのだろうか?
 


 
ここには二つのことが書かれている。すなわち、
 
1)誰にも書けないことを書く
2)誰にも分かるように書く
 
である。それぞれを見ていこう。
 
【誰にも書けないことを書く】
 
つまり、あなたにしか書けないことを書くべきであるということだ。あなたも採点者の立場になって考えてみると良い。または、書き込み回覧の読者でも良い。
 
作文のタイトルに「ボールペン」が与えられたとする。次の三つの作文のうち、君はどれの続きを読みたいと思うだろうか?
 
その1
「ボールペン」というタイトルから思い浮かべることができるのは、「ペンは剣よりも強し」という言葉である。
 
その2
「ボールペン」というタイトルから思い浮かべることができるのは、ボールペンは、失恋と同じではないかということである。
 
その3
「ボールペン」というタイトルから思い浮かべることができるのは、雷の停電の夕べである。
 
その3が読んでみたいと思ったのではないだろうか?
 



 
種明かしをすると、1つ目は、テーマに関して、ことわざで結論を述べている。2つ目は、テーマに関して思いついたことをちょっとひねって提示している。3つ目は、私の小学校の時の体験である。
 
ちなみに、この文章の続きは次のようなものである。
 
その1
「ボールペン」というタイトルから思い浮かべることができるのは、「ペンは剣よりも強し」という言葉である。ベトナム戦争を終わらせたのは、アメリカのマスコミである。つまり、ペンが剣を止めたのである。
 
その2
「ボールペン」というタイトルから思い浮かべることができるのは、ボールペンは、失恋と同じではないかということである。どちらもよく胸に刺さっているものだ。
 
その3
「ボールペン」というタイトルから思い浮かべることができるのは、雷の停電の夕である。
私が小学校4年生の時だ。母は仕事から帰らず、家には私と妹と弟しかいなかった。大きな雷の後、家の電気は消えた。怖がる妹と弟の手前、私は怖がることができない。
流しの下からロウソクを取り出してきて点けた。しかし、電気がなくてはテレビを見ることもできない。兄ちゃんとしてはなんとかして、この怖い状況を救わなければならない。
そのとき突然思いついたのが、ボールペンで広告の裏の白い部分を塗るという遊びであった。妹と弟は二歳ずつ年が離れているので、少しずつ小さい紙にした。よーいどんで塗り始めた。何も言わずにただ塗った。外は雷。部屋はロウソクの明かり。部屋の中では必死に塗りたくる三人の兄弟。周りから見れば怖い風景ではあるが、母が帰ってくるまで私たちは怖さを感じることはなかった。
 



 
ことわざと歴史の事実は、誰でも調べれば書ける。ところが、思いつきは人によって思いつくことが違ってくるだろう。そして、体験になってしまえば私と同じ体験をした人は、ほぼいないはずである。私の兄弟であっても、同じことをしていても立場が違うから同じ作文は書けないはずだ。
 
君達への作文指導で、私がまだ徹底していないのがこの「誰にも書けないことを書く」の部分である。
 
またまた種明かしをすれば、「書き抜きエッセイ」では、本の記述から自分の体験を思い出し、それをしっかりと書くということで「誰にも書けないことを書く」練習をしているのである。
 
今回の修学旅行では、
 
事前学習で「コピー作文」「依頼状」
事後学習で「お礼状」「修学旅行の作文」「小岩井農場での体験学習レポート」
 
が国語での学習範囲になっている。
特に、「修学旅行の作文」「小岩井農場での体験学習レポート」では、この「誰にも書けないこと(自分がしたこと・自分が思ったこと・思い出したこと)」を中心にまとめて欲しい。
 
【誰にも分かるように書く】
 
これについては、いくつか学習を進めてきている。復習の意味で振り返えろう。
 
・イメージの花火
・タイトルと副題
・三行で勝負
・三枚で勝負
・小見出しを付ける
・会話を入れる
・書き込み回覧作文
・はじめ、中、終わり
 
などをやってきています。
 
「イメージの花火」では、自分の頭にある作文のテーマに関係する内容を一度出してみる作業を行っている。
 
文章は、書き始めてから思いつく内容もある。ワープロならば問題なく簡単に修正がきくが、鉛筆書きの小論文や君達が学校で日頃書いている原稿用紙の作文などでは書き直しは大変な作業になる。だからこれは最初にやっておく必要があるのです。
 
そして、「花火」で自分が書けるアイディアを出し切って、その中から面白いネタを選んでどの順番で書いたらいいか構成を考えて書くことが大事なわけです。
 



 
「三行で勝負、三枚で勝負」というのは、学校では生徒全員の作文を読むのが当たり前であるが、社会ではそうはいかないということから教えたことでした。
もっといえば、入社試験の作文なども最初の三行を読めばその人の力量が分かってしまうと近藤勝重さんは前掲書に書いています。
 
書き出しの三行が、読まれるかどうかの分岐点です。
 
君達に指導したのは、
 
・三行の中に会話を入れると良い。
・何事か分かり過ぎる内容は書かない。
・時間順に書くのではなく、インパクトのある順に書く。
 
でした。
 
三枚でまとめるというのは、一枚に付き一つのテーマで書こうと言うことでした。それぞれに小見出しを付けて読みやすくするということも指導しましたね。この三つのテーマも面白い順でしたね。
 



 
「タイトルと副題」についても考えました。タイトルは、文章を書く人間がその仕事量の半分をここに注ぎ込むぐらい大事な場所です。読んで貰える本かどうかは、ここにかかっています。
 
雑誌、『ダ・ヴィンチ』(2000年1月号)で、タイトルに惹かれてて買った本ベスト10を見てみると、
 
1 『買ってはいけない』
2 『五体不満足』
3 『秘密』
4 『屍鬼』
5 『すべてがFになる』
6 『ぼくは勉強ができない』
7 『完全自殺マニュアル』
8 『きらきらひかる』
9 『限りなく透明に近いブルー』
10『一人の男が飛行機から飛び降りる』
 
などでした。(ちなみに私は、『ぼくは勉強ができない』山田詠美・新潮文庫がお勧めです。高校の教科書に採用されたようです。これもびっくり)
 
タイトルでは、なんのことだか分からない。読んでみたくなるようなタイトルが良い訳ですねえ。
 
しかし、タイトルから何のことだか分からないようでは困るので、何についてのことかが分かるように「副題・サブタイトル」を添えるのだとも話しましたね。
 



 
「書き込み回覧作文」では、お互いに読みあうことで、
 
・同じテーマであっても、違う角度で書いている作品を読むことで、テーマの広がりを確認する。
・書き込んで貰うことで、読者の視点を理解する。
・書き込みがあるということで、読者を意識して書く。
・読者がいることで間違いのある文字を少なくしようと意識が働く。
 
を目的として行っています。
 



 
「はじめ、中、終わり」は、きちんと教えていないかも知れません。
 
君達に教えた文章の書き方は、「中」の内容をどうしたら高められるかです。これにはじめと終わりを付け加えるといいでしょう。
 
はじめというのは、中の文章を読むのに知って置いた方がいい情報のことです。プロローグと言った方がわかりやすい人もいるかな。終わりはエピローグです。話題の付け足しや今後の方向などを書き足すところです。
 
文章の比率としては、
 
はじめ:1
中  :8
終わり:1
 
が基本です。
さあ、面白い作文を書いてね。

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